ARCUSにて滞在制作を行っています

9月末からARCUSにて滞在制作を行っています。不定期更新とは言え、このブログではそのことについて一言も触れていなかったので、少しでも書いておかなければと思い、筆をとりました。

ARCUSは茨城県守谷市にて実施されているアーティスト・イン・レジデンスのタイトルで、ラテン語で「門」を意味する言葉だそうです。国内外のアーティストに毎年一定期間、廃校の一室をスタジオとして提供しています。これは日本におけるアートプロジェクトの先駆けとなる活動で、2010年は開催15周年となる記念すべき年でした。日本国内よりも国外での認知度のほうが高いほどだそうで、レジデント3組の枠に対し、今年はなんと14倍もの応募があったそうです。

私はひょんなことからここに滞在させていただくことになり、昼はバイト、夜は制作という二重生活を送っています。そこでいくつか、気が付いたこと、思うことを箇条書きしてみましょう。


【「まなびの里(旧大井沢小学校)」にいる人々について】
■レジデントアーティストは、高い倍率をくぐり抜けてきたというだけあってか、優秀で親切な方ばかりです。勉強熱心でもあって、私が英単語を覚えるよりもずっと早く日本語を習得しつつあります。とてもフレンドリーなスタジオメイトたちです。
■スタッフの方々も、皆さんこちらが申し訳なくなるくらい親切です。なので、とっても居やすい! 感謝しています。。そして、学校を出て寄る辺なくうろうろしていた私に、新たな居場所を用意してくださった運命の女神にも重ねて感謝しなければなりません。
■「まなびの里」では、私がこれまで出会ったことのないタイプの人と出会う機会が多くあります。興味深いのは、昨年あたりから私は「都市」「地域」「風景」などなど、ある方向性を持ったキーワードを聞かない日がないということ。地域系アートプロジェクトの老舗として故無きことではありませんが、ARCUSでも、上記の言葉たちと関連ある人々と出会う確率が非常に高いのです。


【アルバイトと制作の両立について】
■他のレジデントアーティストはフルタイムで制作できるのに対し、私は彼らのおよそ2/7の活動時間しかありません。彼らも祖国ではそうなのかもしれないし、レジデントではない私と状況が異なるのは仕方のないことだけれど、いかんせん周囲を見渡したとき、時間のなさにやるせなくなってしまうことがあります。やろうと思ったことの半分もできない――というのが現状です。昨年までの学生生活とは異なった制作ペースを掴むことが必要なのでしょう。来年になったら改めて生活のデザインをするつもりです。とはいえ、私のような若手美術家にとって発表の機会と言えばコンペディションがほとんどなので、半年前の予定がその通りになることなんてあまりありませんが。
■ARCUSディレクターの小田井さんは、そういう制作リズムを作る場としてARCUSを利用して欲しい、と言って下さいました。とても懐の深いプロジェクトで、感謝しきりです。日本各地で大小さまざまなアートプロジェクトが展開されるなか、このようにしっかりとした基盤を持つプロジェクトが存続していくことは本当に重要だと思います。


私はこんなことを考えながら、今日もスタジオで粘土をこねています。それにしても、なんで日本は「芸術の秋」と言うのでしょう! 各種アート系イベントがこの季節に集中するのは、非合理な気がしてなりません。あっちこっち出かけたくても、自分の持ち場がある。アート関係者が動けなくなっているではありませんか。