鴻池朋子展『インタートラベラー 神話と遊ぶ人』

http://www.operacity.jp/ag/exh108/

観てきました。鴻池さんの作品をまとめて観るのはこれが初めてです。視覚だけでなく、触覚や嗅覚、平衡感覚を含めた身体感覚を使って、一人の人間の心のなか=地球に入っていく、というストーリーで個展全体がひとつのアトラクションとなるよう構成されています。


結論からいうと、彼女の作品の要は、「断片」であることのなかにあるような気がしました。物語の断片が謎を残したまま、あるいはそれ自体が謎そのものとして呈示されるということ。


その点から言って、それらのかけらとかけらの間を作り手自身が丁寧に縫合してしまうことや、最初から一遍の織物として時間的整合性をもって制作してしまうことは、一種の危険をはらんでいるように思えたのです。

(数年前、どこかの織物教室の講師が「織物は自由だ!何でも出来る!」とのたまっていたので、「いやいや織物の時間は一方向に織り進んでいくよりほかなくて、ワープもリバースもできないじゃないですか」と突っ込んでみたのを思い出しました。彼はタイムマシンを見つけたでしょうか。)

かなりサービスして作っている気がしたので、もうちょっと不親切でもいいんじゃないかなー、と。それこそ、焚書で焼け残ったピースを、観客自身の想像力で繋ぎ合わせるような。


今回、ストーリーという垂直展開が観られたので、今後はより細かな平行展開が観られたらうれしいです。個人的には、「第何章」シリーズの一枚にさりげなくくっついていた、〈星座を紡いだ糸につかまる黄金虫〉がお気に入りなので、そういう脇役たちをもっといっぱい観たいですね。注釈を付けるような感じで、とか、どうでしょう。。

ちなみに、前回から想像力想像力、と言っているのは、この展示の影響だったりもします。