クリストとジャンヌ=クロード展  共同制作について

クリストとジャンヌ=クロード展 LIFE=WORKS=PROJECTS http://www.2121designsight.jp/candj/index.html

もしあなたが、六本木アートナイトの夜にここでむせび泣いている女の子を見かけていたとしたら、それは私だったかもしれません。


公私ともに長年クリストのパートナーであり続けたジャンヌ=クロードが昨年秋に亡くなったことで、企画の始まった展示なのだそうです。彼らのこれまでの仕事を俯瞰しつつ、それらの設計、そして資金調達ために描かれたドローイングやコラージュを中心に展示してあります。

それらの魅力もさることながら、私の心を打ったのは、作品の断片を通して垣間見える、二人の強い信頼関係でした。



少しでもそれを試みたことのある人なら想像できると思いますが、共同制作というのは本当に厄介な作業なのです。そもそも複数人で作品を作るということで、必ずしも効率が良くなるとか、面白いものができるというわけではありませんし、会社のような組織とも異なるので、これをしておけば良いという役割が個々人に定まっているとも限りません。それより何より危険なのは、妥協を許した途端に制作行為そのものが根本から意味を失ってしまいかねないということです。(妥協について考えると、逆にいかに多くの共同体が妥協をもとにして成り立っているか、ということに思い至ります。)


ヴィジョンの共有に向けて惜しみなく重ねられたであろうディスカッション、そしてそういった濃密なコミュニケーションを可能にした相互の強い信頼。互いの能力や思想を信じることができなければ、これらの大規模なプロジェクトを実行するだけのモチベーションが生まれることはなかったでしょう。そしてそれをこんなにも長期に渡って実現してきたということは、もはや奇跡なのではないかとさえ思えるほどです。月並みな表現になりますが、二人にとって世界はまさに大きなカンヴァスだったに違いありません。



我が身を振り返れば、一番近しい人にすら完成予想図を伝えられていないのが実情です。ここはクリストを見習って、まずはちゃんと伝えることのできるドローイングから始めなければな、と思います。